2008/04/17

ウィーンを歩く

ツアーということもあって、それまでは良くて数時間のフリータイムばかりだったが、7日の午後とこの日は自由観光だった。
朝は添乗員について郊外ののみの市へ行った。そしてグループの友人たちと地下鉄で中心市街地へ戻ったあと、夜の室内楽の時間まで僕は1人で動くことにした。まずはリンク沿いにある王宮へ行った。リンクというのは旧市街中心部を縁取る環状のトラム路線のこと。かつて城壁が取り囲んでいたが、防衛の必要がなくなったため、それらを取り払った。さらにその周辺に設計競技によって建設された公共建築が集められている。王宮は広大な庭を前に構え、居座っていた。ハプスブルグ家の栄光を物語るように。そこから、適当に行きたいところを決めて地図を見ながら、でも気まぐれ半分でほっつき歩いた。途中、休憩がてら2回カフェに入った。どちらも地元生活者が多い印象。会計は「ツァーレン ビッテ」、ありがとうは「ダンケ」。もう慣れっこである。2軒目のカフェを出て、また歩いていたら、道の先から「on the sunny side of the street」が聞こえてくる。広場の隅で路上演奏をやっている人たちだった。クラリネット、バンジョー、サックスの3人組。このあと、「take the A train」もやっていて、少し立ち止まって聞いていた。その広場ではマーケットもやっていた。屋台みたいな木の建物がずらっと並んでいて、木のおもちゃからアクセサリーまでいろいろ売っていた。さらに歩いてちょっと疲れたので、トラムを使ってリンクのおおよそ北端から南端へ移動した。高さの揃った街並みや欧州車、当然ながら車窓から見えるものも日本とは全然違う。降りた駅近くのウィーン美術館では「ナゴヤ展」なるものも開催されていた。展示会には入らなかったが、ミュージアムショップで展示に関する分厚い本を立ち読みする。名古屋城、万博、トヨタなど…なるほど。スシのサンプル、チョップスティックスも売っていた。ウィーン美術館を後にし、もう半ばやることがなくなって、前日も行ったケルントナー通りへ。スーベニアショップからH&Mまで立ち並ぶ、道幅10数mの歩行者天国となっている。ここはだいぶ観光客が多い。それでも地元の若い人たちも多くいるのだろう、僕には区別がつかないが。ずっと1人で動いていたので、日本語もしゃべらないし、目に入るのも色白で鼻筋の通った顔ばかりである。日常の面影が全くない、この感覚が心地よかった。気分はもう欧州人である。日本人・アジア人はあまり見かけなかったが、たまに見かけると10m先でも区別がついた。ここにもいた、と出くわしたのは薄暗がりのショーウィンドウに写った自分だった。僕もやっぱり鼻が低いんだな、とすこしがっかりした。