2008/01/21

スケルトン・インフィル

主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の集合住宅や事務所の建物に関する話。
スケルトンとは躯体のこと。インフィルとは内装・設備などをさす。
日本では内装や設備を仕上た状態で引き渡すことが一般的である。普通の契約はそうなっている。しかし,欧米ではスケルトン渡しが一般的で,入居者が自ら(あるいは依頼して)インテリアや空調・水周り等の設備を造作する。メリットは内装や設備が陳腐化しても,簡単に取り替えられる点である。
建物を使っていて,最初に壊れたり,寿命を迎えたりするのは水周りや空調の設備や配管等である。今までの日本の建築はインフィルもスケルトンと一体で作られている(≒設備の取替えを前提としていない)ので,古い水周りが使い続けられている場合が多い。私の研究室がある建物がまさにそれである。しかも今は使われていない暖房器具が鎮座し,その配管も残ったままだ。(単にお金がないだけかもしれないが)
躯体はあまり老朽化していなくても設備の陳腐化・老朽化により取り壊される建物が多くあったように思う。またそういう「建てっぱなし」的な建物が多く存在することが,古い=ぼろい・汚いというマイナスイメージを植え付け,日本人の(?)新築志向に繋がっている気がする。そしてできるだけ安く建てようとするがゆえに,また安普請で息の短い建物ばかり建てられてたように思う。それだけが原因とは言わないが。

既存不適格

日本の建築について1つ記事を書いて論じようと思っていたけれど、
1つにはまとめきれないので、キーワードという形式を取る。

既存不適格。我々建築を専門とする者にとっては必須単語のようなものだが、一般の方はご存知だろうか?
簡単に言えば、建築の法律が変わっても、すでに建っている建物は法律違反の対象にはならない。そのすでにある、基準を満たしていない建築のことである。法の不遡及ということ。
日本の建築基準法は頻繁に改正される。2007年の6月にも改正された。地震国だから仕方ない面もあるのだが。今既に建っている建物の幾許か(定量的なことは述べられないが)は既存不適格であり、現行の法律を満たしていない。法律を満たす、満たさないだけが問題ならば、姉歯物件以外にも問題の建物はいくらでもあるということ。
既存不適格の建物がそのまま使われ続けるのは問題ではない。ただ、改築・増築となった場合は基準法を満たすような工事が含まれなければ改築・増築を行えない。補強などでその建物を保持できる場合はまだいい。例えば、前面道路の規定を満たしていない場合、その建物・敷地だけではどうすることもできない。
例えば、下町的な木造の建物が軒を連ねる細い路地の街並みを残すことは簡単ではない。
日本の建築の寿命が短いひとつの要因は既存不適格の問題が絡んでいるように思う。

2008/01/11

創造するには

前回と同じブログより,この稿について。
実践となるとなかなか難しいのだが、確かにうなずける内容だ。建築設計に当てはめて考える。建築家(デザイナー)は人にもよるが、最初のコンセプトを考えるとき、また詳細を検討するときにいくつも模型を作ってスタディする。数百案(個)というのは、あながち間違いではないと思う。建築家のアトリエに無数の模型が山積しているのをよく雑誌などで見かける。
設計課題では、ことごとく考えられていない点を指摘されることが多かった。週に1度、エスキスといって、設計途中の図面や模型を先生に見せて指導を受けるのである。大して考えていないのに、自己満足なものばかり作っていた。無知の知がなくて自分では及第点ぐらいはあるつもりだった。
ある教授がこんなことを言っていた。「図面とはラブレターのようなものだ。夜中にこれだ!と思って、ハードライン(定規を使った線)で一気に描き上げても、翌朝見てがっかりすることがある。」多少なりとも設計をやっている身としては、なんとなく分かるような気がした。
研究の場合、実験にしろ解析にしろ、手探りでも良いからとりあえずやってみないとわからない。私はまだ調査的な研究しか行っていないので、あくまで印象でしかないが。