2008/01/21

既存不適格

日本の建築について1つ記事を書いて論じようと思っていたけれど、
1つにはまとめきれないので、キーワードという形式を取る。

既存不適格。我々建築を専門とする者にとっては必須単語のようなものだが、一般の方はご存知だろうか?
簡単に言えば、建築の法律が変わっても、すでに建っている建物は法律違反の対象にはならない。そのすでにある、基準を満たしていない建築のことである。法の不遡及ということ。
日本の建築基準法は頻繁に改正される。2007年の6月にも改正された。地震国だから仕方ない面もあるのだが。今既に建っている建物の幾許か(定量的なことは述べられないが)は既存不適格であり、現行の法律を満たしていない。法律を満たす、満たさないだけが問題ならば、姉歯物件以外にも問題の建物はいくらでもあるということ。
既存不適格の建物がそのまま使われ続けるのは問題ではない。ただ、改築・増築となった場合は基準法を満たすような工事が含まれなければ改築・増築を行えない。補強などでその建物を保持できる場合はまだいい。例えば、前面道路の規定を満たしていない場合、その建物・敷地だけではどうすることもできない。
例えば、下町的な木造の建物が軒を連ねる細い路地の街並みを残すことは簡単ではない。
日本の建築の寿命が短いひとつの要因は既存不適格の問題が絡んでいるように思う。

1 件のコメント:

hirottyan さんのコメント...

この記事を読むと「建築物は社会的に存在している」という至極当然な事実に今更のように行き当たります。もう少し突き詰めると、それは施主(持ち主)の意志だけでは存在し得ない。自然条件からの制約以外に、種々の社会的制約とせめぎ合った結果として、そこに存立しているということです。
この場合の社会的制約の少なからぬ部分を建築基準法という法律が担っていて、それぞれの決り事には、安全のためとか、個人の人権のためとかの大義名分があるわけです。
このことで、私が常々感じていることは、法律が1つ作られるたびに、役人の仕事が確実に1つ増えているという、いささかげんなりするような事実なのです。