2008/02/12

作り手本位のデザイン

建物(集合住宅)で言えば、うなぎの寝床なのも、収納が少ないのも、(RC造なのに)上の住戸の音が筒抜けなのも、作り手本位と言える。ここでの作り手とは、施主やオーナーも含む。確かに(全ての住戸を南面させた上で)貸付面積や住戸数を最大化させようと思えば、うなぎの寝床みたいな住戸割が最適である。狭い平面をなるべく居室に割り当てるには、収納や水周りはコンパクトな方がよい。また建設費を安く抑えるために、床スラブや壁は薄いほうが良い。全て作り手本位の原理だ(日本の家賃が高いという側面もあるが)。その結果使い勝手はないがしろにされてきた。建築だけの話ではない。あらゆる製品も然り。
本来、デザインとは使い手本位であるはずだ。使い手が感嘆するような配慮がされているものこそ優れたデザインだと僕は思う。

2 件のコメント:

hirottyan さんのコメント...

このテーマでは「建築物」と「工業製品」の間に線引きをしたほうが、よくはないでしょうか?。前者は空間に繋がれたもの(制約を受ける)であり、後者はその点での自由度が比較的高いものです。
●今読んでいる文庫「人は仕事で磨かれる」の中で丹羽宇一郎さん(伊藤忠商事元会長)が次のように言っていたのに興味を覚えました。「日本の(工業)技術が進歩していったのは、口うるさい(中間層の)消費者のおかげだ。だからこそメーカーは、より品質の高いものを生み出していくことができた」「(今後、格差社会の進展でこれら中間層の人々が減っていけば)日本の技術を支えてきた力を削ぐことになる」
●デザインに関してはブルーノ・タウトが言った「すぐれた機能をもつものは美しい」に同感です。

gilson さんのコメント...

>hirottyan
線引き‥自由度・量産/一品生産の違いはあるものの,デザインという行為すべてにいえそうな気がしたのですが,丹羽さんの発言を聞いているとそうでもないのかもしれませんね。建築行為においては作り手と使い手の関係が疎遠になる一方です。使用者が設計事務所や工務店に直接依頼する場合は別ですが。逆に言うと両者の関係が近いので,オーダーメイドは新鮮なのかもしれませんね。
ブルーノ・タウトの言葉に似たものはいくつかあって,
Form Follows Function(形態は機能に従う):ルイス・サリヴァン
真の美は力学的(構造的)合理性の近傍にある:坪井善勝
これらはモダニズムの主たる思想だと言えます。