2011/06/23

エンジニアの思想

engineer と engine は語源が異なるという説もあるようだけど、engineerはengineを操る人という語源を元に、話を進めたいと思う。

エンジニアは、もともとエンジン技師を指す言葉だった。それが転じて、あらゆる専門性のある技術や技能の持ち主を指すようになった、という解釈。

昔の蒸気機関(steam engine)は、操作するのがとても難しかった。操作するための知識やウデのある人が操作していた。どのように操作すれば石炭を効率よく動力に変えることができるかを、理論的あるいは経験的な裏付けによって、エンジニアは知っていたのだと思う。

かなり雑に言い切ってしまえば、今も昔も、そしてどの分野のエンジニアも、ある理想的な出力状態(パフォーマンス)のために、いろんな入力(パラメータ)を選ぶという判断を下しているのだと思う。ふつう、その入力と出力の関係は、入り組んでいて単純ではない。

僕たち建築構造の分野では、理想的な出力状態というのは、破損や人災が生じない状態である。それを実現するためには、建物の骨組みをどう構成したらよいか、骨組みの材料はどのようなものがよいか、骨組み1本1本はどのくらいの大きさにしたらよいか、という、いくつもの選択肢を、時間や予算の条件も考慮しながら1つ1つ決めていくのが構造エンジニアの仕事である。

しかも、単に「破損や人災が生じない状態」といっても、どのくらいの規模の地震まで、これを適用するか、社会やクライアントがその条件を提示してくることは、まずありえない。
「うちのマンションは200galの神戸地震で時刻歴やって弾性設計してよ。」
とか言える人はすでにそういう仕事をしているはずである。
(※「」の中は事実無根の内容です)
なにか地震に関しての要求があっても、もっと漠然としていて、とにかく「壊れないように」とかその程度だと思う。そうすると、エンジニアが、自らの判断により、耐えうる地震の規模を設定しないといけない。

このような判断こそが、エンジニアリングの本質だと、僕は思う。つまり、だれがやっても結果が同じになるような構造計算の部分よりも、その計算と計算の間にある、種々の個人的な判断がエンジニアには重要なのだろう。

この種の判断は、その昔のエンジン技師にも必要だっただろうし、今のあらゆるエンジニアにも必要なことなのだろうと、僕は理解している。

この理屈の展開を成立させるため、僕の中で「エンジニア = エンジン技師」説が消えることはないし、いつまでも最有力説であることに変わりはないだろう。

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